第15章 【琥珀色】MRI knock
だが、耳郎は驚かなかった。
好意を抱いているどころか二人は既に付き合っている。
そこまで知っていたからだ。
爆豪とハイリが一戦交えたあの日、寝てしまったハイリの事を担任に伝えに言ったはずの職員室。
つい長居してしまった耳郎は
念のため様子を見に教室へと戻った。
するとどうだ、とっくに帰ったハズの轟が教室に入って行くではないか。しかもその手には缶コーヒーが二本…。
(なんで轟が…?)
接点を見つけ出せないだけに
二人の組み合わせを勘繰ってしまう。
どうしたものか、妙に入りづらくなってしまった。
困り果てた耳郎は、悪いと思いつつも好奇心に負けて“個性”を使い…
そしてこの教室での二人の会話を聴いてしまったのだ。
『しょうと…待って…。』
『嫌か…?』
『やじゃ…ないけど、先生くらいは
来るかも…。』
『嫌なら、逃げていい…。』
昨日今日の関係じゃない。
そう思ってしまう程の密な声音。
声しか聴いていないのに
何が起こっているのか頭が勝手に想像してしまう。
頭が一瞬で沸騰してしまった耳郎は
当然中に入れるはずもなく
そのまま逃げるようにその場を後にした。
ハイリは一つ勘違いをしている。
真に警戒すべきは芦戸じゃない、耳郎だったのだ。
ただ彼女が良識の持ち主だったから広まらなかっただけ。
とっくにバレていたのだ。