第15章 【琥珀色】MRI knock
~Sideハイリ~
芦戸三奈ちゃん “個性”は『酸』
紫がかった桃色の肌と桃色の髪、おっきな黒目。
見た目こそサイケデリックだけど、無邪気で大胆で気さくな女の子。
恋バナはクラスで一番似合うと思う。
思うよ?
思うけど、その対象が自分となると話は変わってくる
ハズ…だった。
「う…うん。」
咄嗟の嘘は得意じゃない。
加えて仰天してしまって、事実は容易く溺れ出でた。
私の少し前を歩いていた三奈ちゃんは
くるりと振り返り鞄を後ろ手に満面の笑みを私に向ける。
後ろ向きに歩きながら、返って来た言葉は
「ほらーー! やっぱりっっ!!」
まるで、何かの再確認みたいで…
重い頭を傾げてしまう
(何が「ほら」で何が「やっぱり」なんだろう?)
「後で話したーい!聞きたーい!」なんて歌いながら、“個性”を使った訳でも無いのに滑るように先を行く三奈ちゃん。
私も聞く側なら大歓迎だ。
というか三奈ちゃんはどうなんだろう?
好きな人居るのかな?
皆は?
並んだ疑問は、現実逃避に過ぎなかった。
(って、今はそこじゃない!
しまった…何頷いてるの私!!)
事実を言ったと言うよりは
もう隠すのを止めたい…って願いが口をついて出た。
そんな感じ。
タイミングが悪った。
昨日からあれこれ悩んでいたからつい、うっかり…
頭の中で誰かに責任転嫁しようとしたけれど
どう考えたって自業自得だ。
(焦凍ごめんなさいっ!)