第14章 【琥珀色】後天性片想い
~Side轟~
俺に言わせりゃハイリは、回りくどい。
まだ話は終わってない。
そう言った割には、続く言葉が出てくる気配はなかった。
(こっちが本題か…?)
向かい合うように膝の上に乗せて、顔を窺い見ること数分
俺にしちゃ待った方だと思う。
「あー」だの「うーん」だの散々言いあぐねていたハイリはやがて、気まずそうにぽつりと零した。
「あの…お昼休みの女の子の方は
どうなったの…?」
「………………?」
見下ろす小さな顔にふわりと髪が掛かる。
いつもより輪郭が小さく見えるその顔では、大きな亜麻色の眼が余計際立って見えた。
左から右へ、左から右へ俺の様子を窺っては逃げていく忙しい瞳。それでも、どうしても俺に焦点を定める気はないらしい。
(昼休み…? 女…?)
問いの意味を考えるべく傾げた頭は
そんなハイリで満たされちまう。
昼休みに何を話したか…
当然、思い出せるはずがねぇんだ。
コイツは目を合わせたくねぇようだし
早々に思い出す事を諦めた俺は
これ幸いとファスナーへと手を掛けた。
「焦凍っ!!」
掴まれた右手。
同時に「めっ」と言いながら細い指先が額の中心を突く。
叱られるにはあまりに可愛すぎる仕草に
こっちは理性を保つのが精々
我慢してんのに何を思い出せって?
大体、俺自身が忘れるくれぇの事を
ハイリが気にする必要がどこにある。
俺にしてみりゃ理不尽な話だ。