第14章 【琥珀色】後天性片想い
~Side轟~
慣れねぇツッコミに俺まで頭が重くなってきた。
手を頭につき視線を落とせば
白いテーブルの上に置かれたコーヒー。
珍しく入れたミルクは未だ混ざりきっておらず
マグカップの中でマーブル状に揺蕩っている。
ムラのある白がユタリと渦を巻き泳ぐ。
その模様に眠気を誘われた俺は、一つの結論に辿り着いた。
(このままでいいか…。)
いくら違うと言えど
どうせハイリは納得しねぇだろうし
したらしたで事実に行きついちまう。
爆豪が本当は誰を思ってるのか…。
例え器が小せぇと思われようが
ここばかりは譲れねぇ
ハイリの事に関して
うだうだ悩むのは性に合わねぇし
何よりさっきから慣れない事をしている所為で
………ねみぃ。
(とぼけた奴で良かった。)
ハイリの大幅な勘違いには度肝を抜かれたが
結果的には都合が良い。
結局は強く否定することも出来ず
話を濁す事にした。
「ハイリ。」
手招きしながら名を呼べば
おずおずと膝歩きでやって来る。
摺り寄せて来るならまだしも
胸にくらった頭突きが勢い良すぎて
笑いしか出てこねぇ。
(なんで拗ねてんだ?)
「そろそろ夏物に変えないと」そう言ってる割に
中々変えない茶色の部屋着。
もこもこした肌触りが気に入ってるのか
同じモンが二着ある。
抱きしめて最初に触れるそれが気持ちいいのは俺も同じだが
どうせ触るなら、ハイリの肌の方がいい。
「少し早ぇが、もう寝るか?」
パーカーの裾からスルスルと手を入れると
触れた素肌がぴくりと跳ねた。
捩る身体を抱き込み
首筋に鼻を摺り寄せる。
ふわりと香る石鹸の泡みてぇな香りは
泡食ってばかりのコイツにぴったりだ。
今まさにその状態のハイリを笑うと
笑われた本人は俺から逃れようと
必死に首を振ってもがいていた。
「まだ話は終わってないよっ!?」
「ん?」
珍しい。
大抵この辺りで流されてくれる奴だが
くだらねぇこの話
コイツにとっては余程大事なことらしい。