第14章 【琥珀色】後天性片想い
~Side轟~
「爆豪くんって焦凍のこと好きなのかも…。」
コイツの頭ん中を一度見てみてぇ……
その日の夕食後
「ちょっと聞いて欲しいことがある」
から始まったハイリの仮説とやらを聞いた俺は
手にしていたマグカップを落としそうになった。
「は…?」
度々思うが
コイツと居ると知らない自分が多々出てくる…。
ちょっとズレてるっつー自覚はあるが
間違いなくここに関しては
俺の意見が正しいだろう。
(……いやそれは…ねぇだろ。)
沈痛な面持ちで項垂れるハイリは
とても冗談を言っているようには見えねぇ。
マグカップを握りしめる両手が白んでいるし
何故か青ざめている。
タチが悪くても冗談であって欲しいが
たぶんこれは本気で悩んでんだろう…。
なんでそんな理由でここまで意気消沈できんのか?
その前になんでその結論に辿り着いたのか?
そう長くもねえが
今まで生きてきた中でこれ程に頭ン中を疑問符で満たしたことがあっただろうか。
(……それとも俺がおかしいのか?)
混乱の中部屋にある音といや
上の階から響く足音と時計の針の音くれぇだ。
ハイリの言葉が途切れた後の沈黙に耐え兼ねた俺は
とりあえずはと口を開いた。
「………とりあえずだ。
色々かっ飛ばしすぎだろ…
なぜそうなった?」
「だって焦凍モテるし!!」
説明を求めて投げた問いは
すぐさま意味を無くした。
意味がわからねぇ上に今一つ根拠に欠ける。
いつも乏しいと言われる表情も
流石にこの時ばかりは引きつったと思う。
だが、そんなの知らないとばかりに
ハイリの根拠は続く。
「登下校中だって、買い物中だって
女の人だけじゃなくて男の人も振り返るでしょ?
だからあり得るのかも! って思って。」
「そりゃ俺を見てんじゃなくて…。」
お前を見てんだ…。言いかけた言葉は飲み込んだ。
両手を握りしめ、机に身を乗り出し
何故か熱く語る俺の彼女にここまで気圧されたのは
たぶん初めてだと思う。