第14章 【琥珀色】後天性片想い
~Side轟~
「ちょっと! 結局どういう――……」
途中で途切れた聞き慣れた声
壊れんばかりに開いたドアの音
閉ざされかけた日の光が、男ひしめく室内に再度差し込んだ。
半開きの口を固めたハイリは目を覆う事もせず
ここが何処か理解できていないように見えた。
俺はともかく、他の奴らまで見せんのは
個人的に気に食わねぇ。
さっさとこの場から去らせようと掴んだ肩が
水に浮かぶ風船のごとく揺らぐ。
赤面した顔。
両手を口に当て、一歩後退した足元はたどたどしい
未だに隠せていない丸すぎる目は渦を巻いて見える
間違いなく、テンパってやがる…。
「あ、あ…。」
もはや、見えていても頭には入ってねぇんだろう。
うわ言のような言葉を漏らしているにも拘らず
一向に去る気配のないハイリに
呆気に取られていた後ろのヤツらも反応し始めた。
「……楠梨くんっ! ここは男子更衣室だぞ!?
未婚の女性が堂々と――…」
「いや、飯田! 既婚ならいいのかよっ!!」
「ヒョーォォ! 堂々とオイラの裸を見に来るって事は
これはもうっ…ゴフゥ…」
「落ち着け峰田、ありゃどう見たって
故意にじゃねぇ…。」
「上鳴ィ? お前は同士だろ!?
ここでキセイジジツやらなんたらで
責任とって貰えばいいだけの話――…」
「黙れクソカス共っ!!!」
被せに被さった会話が延々と続く。
投げられては室内を乱反射するかのような言葉によって
状況を把握し始めたハイリの顔が、今度はどんどん白くなっていった。