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【ヒロアカ】UAシンドローム【轟焦凍R18】

第14章 【琥珀色】後天性片想い


~Sideハイリ~


掠め取られたのは何も唇だけじゃない。

気まぐれ猫はそんな私の気も知らず
自由気ままに諸々と奪い去っていく。
心ごとごっそり持っていかれた私は
文字通り放心して、その場に立ち尽くしてしまった。


「ま、駄目って言われたところで
止めるわけねぇけどな。」


ゆっくり離れていく口元も
嬉しそうに小さく笑う横顔も
きっと目を閉じていても鮮明に見えるんだろう。
それくらい目を奪われてしまう。

いつの間に
こんなに夢中になってしまったのだろう。
毎日「好き」を沢山くれるのに
それでも私ばかり好きなんじゃないか、なんて思ってしまう。

心は留守のまま
手を引かれるがままに埃塗れのグラウンドを歩きだす。
地を踏む感覚がザリと鳴る土から固いアスファルトへと変わると
左手を包んでいた温もりが離れていった。


「じゃ、後で。」

「う、うん…。」


サラと髪を揺らして
片手を上げた後ろ姿がドアに向かって去っていく。

今日はそっけない
そう思ったばかりだったと言うのに
結局心を乱されてしまった。


(突然どうしたんだろう?
いつも気まぐれすぎて行動が読めないよ。)


触れ合ったばかりの口を手で覆って、鼓動を整える。

弾く音と反比例してクリアになる頭が
そんな疑問を呼び起こし



そして理解した。



(………ぁ。)


はぐらかされた…。
あの人結局、質問に答えてないじゃない!!


「もう…っ!」


ドアの向こう側へ消えゆく背中に手を伸ばして
閉まりかけていたそれを音をたてて開く。


「ちょっと! 結局どういう――……」


そしてその向こう側の光景に
私は固まった。




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