第14章 【琥珀色】後天性片想い
~Sideハイリ~
どれくらい悶々としていたのだろう?
肩に手を置かれ顔を上げると
周りにいた筈のクラスメイトは
一人を除いて気配もろとも消え去っている。
少し強めの風が塵を巻いて吹き去っていく光景が
私に孤独をことさら強く感じさせた。
「どうした?
もう終わってんぞ?」
声の主は私を悩ませてるなんて気付きもせず
あくまでクラスメイトとして気遣ってくれている様。
既に気力と共に肩を落としてしまった私は
悩んでる理由なんてこんな場所で言える筈もなく
口を開いて数秒…声が出なかった。
「…………いや、しょ…轟くんも爆豪くんも
診察受ける気ないのかなと、悩んでた。」
「爆豪はともかく、俺は必要ねぇ。」
どこか素っ気なく見えるのは
ここが校内だからだろう。
付き合っている事を伏せているからだろう。
触れた部分は肩に手の平一つ分
ぽんぽんと二回叩いて、すぐに背を向けてしまう。
やたら場所を気にせず構ってくれると思いきや
気まぐれに素っ気なくなる。
こっちに余裕がない時に限って…。
――やっぱり猫みたいな人だ。
「ちょ、待って!
いつも思うんだけど、どうして!?」
自分から言い出して
自分も納得して甘んじたこの状況
ごっこ遊びの片想いは、時に苦い。
居ても立ってもいられず伸ばした腕は
彼の体操服の上着の裾を掴んだ。
「皆に内緒にしてるから…?」
心に収まりきれない感情が
言葉に零れだす。
自信を無くしかけた心では
目を見る勇気もなく、視界の端にクスと笑う口元が入る程度。
それが段々と近付いて来て、咄嗟にギュッと目を閉じた。