第13章 ♦番外編♦ 熱焦の瘢痕
~Sideハイリ~
フイと逸らされた瞳が数秒宙に留まり、まつ毛を伏す。
今日は良く笑ってたから…
見慣れたはずの無表情が余計に冷たい
私の目にはそう見えた。
(気…悪くしちゃったかな…?)
怒るかも…そう思っていれば、悪だくみを考える顔すらそんな風に見えるものなんだ…。
固定概念とは誠恐ろしい
私は間もなくそれを身をもって知ることとなる。
「あの…焦凍…?」
腕を伸ばそうとしたけれど、それが届くことは無かった。
突然ニッと上がった口端を捉えたその刹那
掴まれた腰を引き寄せられ
先程より何倍も上回った衝撃が躯を貫く。
「~~~~~~ッッ!!」
ヒュっと鳴った喉では声も上手く出せず、浅く息を零すのみ。
浮かしたばかりの両腕は関節という関節が曲がり
背はつったようにピンと反る。
意識に反して固まった自分の身体は
一回り大きな影に包まれた。
凍った思考を溶かすように
耳のすぐ側で深く震える息が漏れる。
「はっ…締め、んなっ。」
「待っ…や、せめ…ぁっ、いってっ……んぅっ」
「せめて、何か言って欲しかった」
伝えようとした言葉は、彼の口に都合よく呑み込まれた。