第13章 ♦番外編♦ 熱焦の瘢痕
~Sideハイリ~
長い長い夜
流れ込む外気は冷たいはずなのに、この部屋の熱が下がることは無い。
二回目の絶頂は声にならず、力の抜けた両手を顔の横に落とすだけだった。
「いう…はぁっ…言うからっ
も、許してっ。」
もはや懇願
引き抜かれた指にずっと強張っていた私の内側はヒクリと一度跳ね、落ち着きに向かって脈拍を下げていった。
粘りに粘ったゲームに白旗を上げたのはやっぱり私だ。
胸にチリと走った小さな痛みを感じながら
顔の両脇にだらしなく置かれた腕を上げて降参を示す。
私の胸に埋められていた顔は愉悦を浮かべ上げられた。
「別に怒ってねぇ…
お願いしてただけだ。」
どうやらご満悦の様だ。
ゴロゴロと喉を鳴らしてすり寄ってくる猫の様に肩に埋められた紅白の髪、それをひと撫でして溜め息をつく。
この空気を壊してしまう、後悔の溜め息を。
「じゃ、聞いても怒らない…?」
「内容による。」
「んー…。」
嘘でも「怒らない」と言わない所が焦凍らしい。
どこか浮世離れした性格は、幼い頃からNo1ヒーローになる為だけの英才教育を受けたせいだと思う。
その所為で膨れ上がった父親への強い嫌悪
この人は、それを示唆する言葉に敏感だから…
「良いから…気になんだろ。」
急かす様に耳を噛まれれば、もう苦笑しか出てこない。
いくら探せど上手い言葉は見当たらず
結局選んだ言葉は、思った事そのままだった。
「焦凍に焦がされてしまいそう…って思った。」
「……………。」
やわやわと耳たぶを噛んだまま一瞬動きが止まる。
ユラと上体が起きて見下ろされる。
一度合ったその目は、すぐに左へ逸らされた。