第13章 ♦番外編♦ 熱焦の瘢痕
~Sideハイリ~
唇は離れても吐息は触れ合わせたまま
熱い眼差しに射ぬかれた。
灯っていたのは熱なんて優しいものじゃない
色違いの筈の瞳が、今この時は同じ赤色に見えて
――焦がされる
炎に巻かれている様な熱さに
ふと、笑みを漏らした。
「何…考えてんだ?」
形のいい唇が問う。
頬を撫でる右手より
背に回された左手の方が熱いのは気のせいじゃない。
焦凍は気付いてないんだろうな
理性が乏しくなるこの時ほど、これがはっきりと表れてる事を。
「焦凍のこと…かな?」
こんな事を口にしたら
きっとこの人は複雑な顔をするだろう。
それこそ怒ってしまうかもしれない。
咄嗟の嘘が下手なのは自覚してるから
濁して、曖昧にぼかして
乗り切ればいいと安易に考えた。
相手が誰か…忘れていた訳でもないのに。
「へぇ…。」
傾げながら引かれた顔、上がる頬に乗せていたのは嗜虐だ。
勝った。そんな心の声が聞こえてきそうだった。
無垢ゆえに残酷な子供は無邪気に笑う。
理解するより早く、身体が反応した。
「っあ…っっ」
予告も何も無く自分の中に挿し入れられた指は
1本じゃない事だけはわかった。
不規則な快楽の波が身体の中心からほとばしる。
声を抑えようと思ったわけでもないのに、口に当てた手は自らの歯で噛み締められた。
楽し気に、さも楽し気に
私の隙を見つけたと言わんばかりに、近付いた口が薄らと開く。
「で? 何考えてたんだ?」
「これ、じゃ…ぁっ、はな、せないっ!」
「そりゃ無理だ、絡め取られて抜けねぇ。」
遊戯のような睦み合いは続く
軽口をたたき合いながら、笑い合いながら
互いの熱は上がり、呼吸も荒くなっていく――…