第13章 ♦番外編♦ 熱焦の瘢痕
~Side轟~
この夜闇では、カーテン越しの微かな光ですらハイリの肌を白く浮かす。
際立つ紅い刻印にゴクリと唾を飲んだ。
心に余裕があれば身体の動きも緩慢となるんだろうか
舌で嬲る度にゆるゆるとシーツの上を這いまわる四肢。
既に乱され、たるみのあったシーツは
シュルシュルと高い音をたて、皺を深くしていく。
ゆったりとシーツを掴む指
反らされた首
とろりと濡れた瞳を伏せ、熱い息を深くつく。
その官能的な姿に見惚れて動きが止まりそうになる。
目が合う度に幸せそうに笑うハイリは
もう癖になったのか…手を伸ばし俺の左の目元を撫でた。
「幸せそうに笑うんだな。」
「ん…幸せ…。」
「………俺もだ。」
三日月を象った唇を触れ合わせ
細い身体を腕の中に閉じ込める。
小さく啄んでは角度を変えてもう一度。
数回繰り返して下唇をやんわりと噛む。
毎晩のように求めてんだ。
甘噛みの後に何が来るか
ハイリはちゃんとわかってる。
誘うように開かれた僅かな唇の隙間に
舌を差し込むと
俺の肩を掴むハイリの手が握りしめられた。
「ん…は…っんぅ…。」
この甘い声を聞くだけで満たされる。
そう思っていた筈だった。
なのに俺はいつの間にか
それ以上を求めるようになっちまった。
限りなく距離をゼロに
いっそ溶かして自分の一部にしてぇ。
執拗にハイリの舌を絡め取り
もっと奥まで求める。
徐々に力を無くしていく首に巻かれた腕は
脆く崩れ落ちた。