第13章 ♦番外編♦ 熱焦の瘢痕
~Side轟~
今日のハイリは一段と雰囲気が甘い。
この瞬間になって改めて思った。
(お陰…? 俺何かしたか?)
考えたのは一瞬だけで
次に瞬いた時にはもうはやめた。
あんだけ可愛いコト言って
こんだけ甘やかされて
考えられなくなった、そっちの方が近い。
翻弄されっぱなしだ…。
「一個や二個じゃ済まさねぇぞ?」
「ん、いいよ…。」
いつもは耳まで真っ赤な顔を今日は薔薇色に上気させ、投げた挑発もゆたりと返す。
きっと一番厄介なハイリだ…。
味わったら最後
他のモンは一切食えなくなっちまうみてぇな…
抵抗するはずのない両手をベッドに縫い留めて、腕を伝い肩へ、鎖骨を辿って胸へと手を滑らせていく。
もう、痕を付けるだけで終わる気なんかねぇ。
ハイリはそれすら望んでいるかのように
ふわりと微笑んだ。
誰が見たって、陽だまりのような柔らかな笑みだってのに、この空気も相まって妖艶にすら見えるから不思議だ。
緩やかな誘惑に魅せられて
もう飛べなくなることをわかっていながら甘い蜜に身を浸す。
「んっ…」
甘やかな声が部屋を満たす
きっと窓が開いてなかったら窒息しちまう
そう思う程濃い空気。
その声が上がる度、俺の印が増していった。