第13章 ♦番外編♦ 熱焦の瘢痕
~Side轟~
『自分のものにはきちんと名前を書きましょう。』
ガキの頃、一度や二度じゃねぇ…
当たり前のように言われた言葉だ。
それは誰が見ても、自分のモンだとわかるように書いとけって事。
それが所有物って証。
って事はだ
これ、意味あんのか…?
指先でなぞったのは細い肩。
白い肌にまだ色を残した昨夜の俺の痕。
当たり前の様に自分のモンだと刻んだ印だが
こんなん誰が付けたって同じだろ。
肩に、胸に、背に至るところに散る紅い花びら
この中に一枚だけ違う奴の痕があったとして
俺は気付くだろうか?
誰か他の奴がこれを見たとして、
これが俺の印だとわかるだろうか?
付き合っている事を伏せている今、それはねぇだろう…。
そこだけは確かだ。
それはそれで
「なんか面白くねぇな。」
束の間の問答はその過程を吹っ飛ばし
結論だけが口を突いて出た。
「……ごめん。」
自分に向けられた言葉だと思ったのだろう。
咄嗟に出たような詫びと、伸ばしかけて止まった手。
「待って」の後に「面白くねぇ」じゃ無理もねぇか。
不安の色を湛えた瞳が一層俺の欲を肯定している様だった。