第13章 ♦番外編♦ 熱焦の瘢痕
~Side轟~
雲が覆っている訳でもないのに月の無い夜。
家路を照らす灯はあっても、家を灯す明かりは失せた
土曜から日曜へと移り変わる午前零時。
どこかの家では鳴っているであろう時を告げる音の代わりに
高らかな鳴き声が上がる。
「やっ…あぁっっ…っ」
乱した髪も濡れた瞳も宵闇の中ではモノクロに
甘い熱に熟れた唇だけが薔薇(そうび)の紅。
心地良い脱力感に包まれてそれを食んだ後、
まだ震えている柔らかな曲線を指先でなぞる。
「今日はここがいい。」
微かな明暗でもくっきりと影を作り上げている双丘の間
大きく上下する肌ををつつくと、
昇り詰めたばかりの敏感な身体はピクリと跳ねた。
「ぁ…待っ…て」
「首がいいか?」
「……もうちょっと、待って。ね?」
細い指先が伸びて来て、愛おしそうに俺の前髪を梳く。
子をあやす様な言葉は
抗いようがない事を覚った上で受け入れるもの。
こんなハイリを感じる度に
際限なく甘やかされているようで
益々欲求が膨らんでいく。
堪らなく付けたくなる。
俺のモンだって印。
既に幾つ刻んだかわからねぇ自分の痕だが
最近、この痕に細やかな疑問を抱くようになった。