第12章 【桜色】ヨマイヤマイ
~Sideハイリ~
教室より遥かに明るい、街灯に照らされた通学路を
既に冷え切った缶コーヒーを片手に
手をつないで帰る。
他愛の無い話をしながらも
頭の中では、いつ切り出そう、いつ切り出そうかと
本命の話題が一つ…取り残されていた。
いい感じのきっかけがあればー…
なんて思っていたけど
(そう上手く行くもんじゃないよねぇ…。)
最終的には唐突に
繋いでいた手を引いて、切り出すことにした。
「ねぇ焦凍…ちょっと考えたんだけど
もう付き合ってる事伏せるの意味ない、よね?」
立ち止まったコンビニ前
一拍遅れて歩を止めた焦凍が、不思議そうに振り返る。
一度会った目はフラリとコンビニの方へと泳ぎ
また戻ってきた。
言わんとしている事は伝わったんだろう。
「ま、そうだな。」
離された手とこの反応…。
「出来ればもう伏せるのやめたい。」
続く予定だった言葉は放てなくなってしまった。
確かに自分から言い出したことだ
自己都合でコロコロ変えるのもおかしいと思う。
だけど
少なからず焦凍は今の状況を理不尽に思っていたと
そう…思ってたんだけど……
表情を窺っては足元に落とす。
私の視線は今までにないくらい、上下運動を繰り返していた。
なかなか読めない焦凍の表情だけど
こればかりはわかる。
手を首の後ろへと当てて、視線は地面へ
肯定的ではないのだろう…。
肩を落としたのは
予想が確定へと変わった時だった。
「あー…ま、もう少しこのままで良いんじゃねぇか?」
「うん…わかった。」
予想できてた分
私の返事も早いものだ。
(タイミング間違えたー…。)
恋心とは本当に厄介だ。
もう少し待つべきだった。
自分がここまでせっかちだったとは…
なんだか私、
この人を好きになってどんどん性格悪くなってない?
しかも要領も悪くなってるよね…?
マイナス思考の悪循環。
断ち切ったのは額に走った痛みだ。
「痛い…。」
「嘘言え。そんなに強くしてねぇ。」
あげた視界には焦凍の右手。
デコピンを食らったのだと、額をさすりながら理解する。
やれやれと笑う焦凍は
空になった缶をコンビニのゴミ箱へと投げ入れ
開いた手で私を抱き寄せた。