第12章 【桜色】ヨマイヤマイ
~Sideハイリ~
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繋がりが解け
息を整えながら顧みた焦凍は
今にも泣きそうな目で笑っていた。
火照りが冷めゆく肩にシャツが掛かり
抱き寄せられる。
何故そんな顔をしているのか
尋ねたかったけれど
たぶん、顔を見られたくないのだろうと
特に抵抗もしなかった。
「ごめんな…。」
「…………。」
返事をしなかったのは怒っているからじゃない
悲しいわけでもない
困っているからだ。
(何故謝られているんだろう…?)
いくら恋愛経験が無いとは言え
何について謝っているかは理解出来た。
確かにこんな所で…
とても褒められる事じゃない。
でもそれは、先生に謝ることであって
私にじゃないはずだ。
突っ込みたいのだけど
相対する温度差が激しすぎて、言葉を選び出せない。
(困ったな…。)
結構、真剣に悩んでいた。
優しい焦凍は私を傷つけたとでも思っているのだろうか?
言葉にせずとも同意はしたつもりだし、拒絶もしなかった。
合意の上でと言うやつだ。
だから「気にしないで」も「別に良いよ」も言えない。
こんなコトを言おうものなら
悪い事をされたと認めてしまうようなもの。
だけど私の沈黙は
彼の言葉を肯定してしまったらしい。
次の言葉に
私は到底的外れな所で頭を悩ませていた事に
初めて気付いた。
「……なぁ
俺は、異常か…?
わからねぇんだ、お前との距離の取り方が。」
後悔に満ちた声。
その言葉の意味は理解はすれど、
今度は答えを返せない。
返せるわけがないんだ
だって
「わからないよ。
だって私、好きになったのも付き合うのも初めてだし。」
「俺のモノだ」と言ってくれた
あれが異常だなんて私は少しも思わなかった。