第12章 【桜色】ヨマイヤマイ
~Side轟~
部屋を支配する音が
淫らに高らかにその輪を広げていく――
「あっ、あああっ…だめ、しょうとっ…」
耳から脳内を蝕み、
弄んでは犯していく――
「すげぇ音、ハイリの音だな。」
指先で耳の縁をなぞるだけで
震え天を仰ぐ姿が
肩に痕が残るほど歯を立てても
甘く上げるその声が
溜まらねぇ
俺だけのハイリ
そう実感しては確認する。
「お前は俺のモンだ。」
快楽で占められた頭は
自尊心をも麻痺させ本音を曝け出す。
言い聞かせるように囁く度に
ハイリはイイ声で啼きながら首を振っていた。
それに満足し、繰り返す。
なのに
確実に満ちてる筈なのに
まだ足りねぇ。
理性の無い獣の様にただ快楽に溺れ
餓えを満たさんと腰を打ち付ける。
永遠に果ての見えないループ
ただそれだけの時間
例えるならその言葉は
モノクロの世界に点した、唯一のカラーだった。
「しょうと、だけだよっ…っ」