第2章 【桜色】先天性世話焼き
~Sideハイリ~
(この話題をなぁなぁで済ますことは出来なさそうだな…。)
だからと言って私の“個性”だって診ることが出来るものとそうでないものがあるのだ。
まずはその説明から…。
話せば話すほどきっと彼の心に土足で踏み込んでしまう。
気が重い。
それでも話さなければこの人は意地でも帰らないだろう。
痛む心を握りつぶしながら私は静かに口を開いた。
「悪いけど、心療は専門外。
考えてもみてよ、心的要因を病理検査で突き止めることなんて出来ないでしょ? それと同じよ。」
「それ『心療』と言ってる時点で説得力がねぇぞ?
はっきり言って良い、恨みを抱えているように見えたって。」
流石ヒーロー科、やっぱり頭の回転は早いみたいだ。
信じて貰えない原因の一つは朝の一言なのだろう。
自業自得だ、それでも診断した前提で話すわけにはいかない。
息を大きく吐き出しても現状が変わる訳じゃない、それでも溜息をつかずにはいられなかった。
「本当に診断してない。
言ったでしょ? 診断には5秒間の凝視が必要だって。今朝ホームで目が合ってから私の言葉が出るまで5秒もあった?」
「確かに…すぐだったな…。」
そう、5秒とは時間として意識すると意外に長いもの。
そりゃ病院行って診察待ち…なんてのと比べたらあっという間だけど、こんな“個性”を使う身としては尚更長く感じる。
「でしょ? あの時感じたのは直感的なものだよ。
ホント、失礼なこと言ってごめんね…。」
納得した様に肩の力を抜く彼に
私も息をつく。
どうやら誤解は解けたみたいだ。
だからと言って失礼な事をしてしまったことは変わらない。
それどころか、より一層増しただろう。
気まずい沈黙で耳が痛い。
伏せた目をどこにやることも出来ず、食べかけのお蕎麦をぼんやりと見やる。
長い沈黙を破ったのは彼の方だった。
「個性婚って知ってるか?」