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【ヒロアカ】UAシンドローム【轟焦凍R18】

第11章 【桜色】慢性合理的疾患


~Side轟~


起こす前に飲み物でも…
そう思って席を外しただけだった。

開いたドアの向こう側に居たハイリは
ようやく親を見つけた迷子のガキみてぇな顔で
抱きついてくる。


(起きるまでずっと側にいてやればよかった…。)


最初に思ったのはそれだった。















両手で抱きしめてやりたいが
缶コーヒーを二本持っている状態ではそれも難しい。
片手を腰に回し、柔らかな髪にキスを落とす。

人は居ないとは言え校内だ。
普段のコイツなら真っ赤な顔をして反論してくるだろうに
寝起きは勝手が違うらしい。


(そういや、昨日もこんなんだったな。
ここまでは無かったが……。)


昨日の保健室。
似たような状況を思い出し小さく笑う。

不安気に瞳を揺らすハイリには申し訳ねぇが
頭に顎を乗せようと、頬を寄せようと
離れようとしないコイツが可愛くて仕方ねぇ。


「ハイリ…? どうした?」


教室に押し戻しながら問う。

答えを求めている訳じゃねぇ
ただ、塞がった片手をどうにかしたかっただけだ。

ト、トンとぎこちない足取りで
後ろに下がるハイリに笑いながら
入ってすぐの青山の机の上に缶コーヒーを置いた。


(ようやく触れる。)


昼休みに触れたばかりだってのに
いつも俺はハイリを欲している。


「ハイリ……。」


顎を持ち上げ、無理に上向かせた瞳は
昨日と違う色味に濡れていた。


「ごめんな。」


眉も目尻も下がったこの顔じゃ説得力ねぇってのに
小さく横にふるふると首を振るハイリは
きっとこの状況に気付いてねぇんだろう。


こんな闇の中で
こんな顔して抱きついてくる

昼休みも今も誘ってくんのは
コイツの方だ。




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