第11章 【桜色】慢性合理的疾患
~Sideハイリ~
久方ぶりに目を開くと
賑やかな教室には音も無く
光もさほどない。
夢の続きだろうか?
瞬きを数回
重ねるごとに自分が寝てしまっていたのだと
今日の記憶が蘇る。
(……………ぁ!)
机上に伏せていた身体を勢いよくあげると
静かな室内に落ちたのは衣擦れの音だ。
「え…?」
肩に触れた寒気に
回り始めた頭が理解する。
自分の肩に掛けられていたのだと。
それは、自分も着ている雄英のブレザーで
私より一回り大きくて
よく…知ってる香りがするもので。
「しょうと…?」
呟きながら彼の席を振り返る。
だけど、焦凍どころか誰の姿もない。
シャツ1枚で帰ったのだろうか?
とは言え、ウチには入れないだろうし…
頭の中には当たり前の様に心配事が並んでいく。
自宅に帰ったならいいけれど…
外で待って無ければいいけれど…
風邪を引かなければいいけれど…
それでも身体は居なかった人を探そうと勝手に動く
胸に抱いたブレザーを握りしめながらフラリと立ち上がり
鞄も持たずにドアへと駆け寄った。
朝より数段軽くスライドしたその向こう側には
「あ、起きたのか。」
今、会いたくてたまらない人…。
「焦凍っ!」
ここが何処かなんて、頭の片隅にすらない。
ただ安心して
目の前の胸に飛び込んだ。