第11章 【桜色】慢性合理的疾患
~Sideハイリ~
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浅眠・まどろみ・夢うつつ
どこか意識があるだけに
幸せを感じられる時間の一つ。
夢に身体を置いたまま
意識はあやふやにもリアルを感知する。
「ハイリちゃ…
あ、寝てるね。」
「疲れてしまったのでしょうね。
そっとしておきましょう?」
「賛成。ウチ、相澤先生に伝えてから帰るわ。」
「お疲れ様、ハイリちゃん。」
「まったね~!」
「風邪ひかんようにね…!」
うん…
皆、またね…
頭の中ではちゃんと返事をしたはずなのに
私の声が空気を震わせることは無かった。
眠りに落ちては意識を戻し
意識を戻しては眠りに落ちる
体感する時間は短くとも
意外に時間は経っているもの
教室の温度が徐々に下がっていくのを
背に感じながら
それでも身体は動こうとしない。
掴み処の無い夢は
脈絡ない上、記憶にすら残らない。
薄闇に浮かぶスクリーンをぬるま湯につかって見流す
そんな心地だった。