第11章 【桜色】慢性合理的疾患
「すみません。」
何処からともなく上がった声に
笑みを変えぬまま相澤は言う。
「俺は雄英教師陣の中でも
ハイリに特別な思い入れがある…」
言葉に乗せたのはハイリと瓜二つの恩師の顔と、その言葉。
『相澤くん、君の“個性”は凄い。
でも対多の戦闘は不向きだわ。
だから他にも武器を見つけなさい。
いーい?
ヒーローって言うのはね……』
――…一芸だけじゃ務まらないのよ…――
「そう…教えてくれた恩師の忘れ形見だ。
どうにかしてやりたかった。
だからと言ってお前らを巻き込んで
騒動を起こして良い訳ないんだがな。
……謝るよ。」
広い面積を誇る雄英のグラウンド
そこにはもう、響いていた筈の金属音などどこにもない。
ぼんやりとした視界に映る真剣試合が終わるまで
あと数分。
そろそろだと小さく笑った相澤は
皆に向き直る。
キリと姿勢を正す一同に向かって
カッと目を見開く
開いた口は半月型だ。
そこにあるのは初日に見せた喜々とした笑みだった。
「しかし…だ
わかっていると思うがこれはハイリには秘密だ。
口を滑らせたものは、有無を言わさず除籍な。」
「「「………ハァァァァァ!?」」」
全員の声がこだまする中、ゆらりと生徒が立ち上がる。
その両の手が挙げられるまであと数十秒…
全ては――思惑どうりに……