第11章 【桜色】慢性合理的疾患
~Side爆豪~
ねじ伏せる前に女はあっさりと負けを宣言した。
俺が拍子抜けしちまうくれぇに、あっさりとだ。
それでもその顔は俺より満足気で
(認めるしかねぇ、確かに俺は楽になった。)
そう思った。
俺の問いは自分で言うのもなんだが尤もだと思う。
大体ああまでして手に入れたコイツを
担任が手放すわけねぇんだ。
なのに女はニヤリと笑って
人差し指を立てて見せた。
「違うよ。
先生はヒーロー科へ編入って言った。
ヒーロー科は…もう一クラスあるでしょ?」
B組が受け入れてくれるかは別として…
そう付け加えて笑う女に、呆れることしか出来ねぇ。
「………ハァ!?」
そりゃ屁理屈ってモンだろ。
あの流れ、どう考えても……
だか、そんな事知ったこっちゃないと
コイツは笑う。
「いいの!
手合わせして…実力差は思い知った!
最悪、ヒーロー科はっ…他の学校にもある。」
返す言葉が見つからねぇってのはこの事だ。
あまりにデカい決断をあっさりと言い放ちやがる。
こんなん目の当たりにすると
自分がどれだけみみっちいか思い知らされる。
(怒鳴る気にもなれねぇ。)
頬が吊り上がってくのが自分でもわかる。
なのに出て来た声は、自分の耳にも届くかわからねぇ程の
掠れたモンだった。
「テメェ…デクの次は俺かよ。
んで次はどーすんだ?
除籍されるやつの世話でもやく気かよ。」
土埃が収まりつつあるグラウンドも
地面に寝転がっている状態じゃ意味がねぇ。
吸わない様にしてるのか口に手を当て
胸を上下させ息を整える真下の女は
肩を揺らし、眉を八の字に下げて笑う。
「それ、ね。大丈夫。」
途端に真面目な顔をして
大きく息をつく。
目を閉じて深呼吸する様は、どこか覚悟を決めたように見えた。