第11章 【桜色】慢性合理的疾患
~Sideハイリ~
頭への衝撃は思った程なかった。
「あッぶねぇだろうがっ…
気ぃ緩めんじゃねぇっっ!!」
ザクリと音をたてて地面に刺さったのは
刃なんてついていない筈の金属棒だ。
どれだけ力がある人なんだと
顔の真横に立てられたそれを見て、今更青くなる。
傍から見たら
押し倒されたように見えるかもしれない体勢だけど
むしろ逆。
倒れるのは免れないと判断して
衝撃を減らすために引き寄せてくれたんだ。
結果、一緒に倒れる羽目となっただけ。
私を覆った影は
言うまでもなく爆豪くんのものだ。
「てめっ、お人よしも大概にしろっ!
こんなんじゃ命がいくつあっても…
って何笑ってんだコラ…」
頭にはご丁寧に手まで添えられている。
どうりで痛くない筈だ。
まったくお人よしはどっちだ。
爆豪くんの焦った表情まで見てしまっては
笑うなという方が無理な話だ。
やっぱりこの人
面倒見のいい人だ。
「いや、ごめ…ん
負け…たぁっ!
約束通り…A組を去るからっ安心して…ね?」
息も切れ切れに
手を振りながら言う。
この手でさえもうクタクタだ
そう言えば腰も痛いんだった。
起き上がるのも、暫く無理そうなのに
「去るっつったって
どっちみちお前はA組残留だろうが。」
対する爆豪くんは息一つ乱してない。
完敗だ。
清々しい程の。
だけど満足だ。
(良かった…。)
ついた息は自分の為のものだった。