第11章 【桜色】慢性合理的疾患
~Sideハイリ~
真剣勝負の最中とはとても言えない
間の抜けた言葉。
最初の攻撃を凌いだ安堵からふにゃりと笑うと
爆豪くんは間髪入れずに突っ込んでくれた。
「んなモン知るかっっ!!
大体デクを庇ってヒーロー科に来たてめェが
俺に喧嘩ふっかけてんじゃねぇッ!」
突然何を言い出すのかと思えば、でく…?
庇う…から推察するに緑谷くんの事だろうか?
(あれ、この言葉――…)
聞き覚えのある単語に首を傾げると
ポンっと休み時間のお茶子ちゃんの顔が浮かんだ。
『デクくんと爆豪くんは、幼馴染らしいんよ!
デクってあだ名も爆豪くんが付けたんだって!』
実はあの時「その前に、でくって誰?」と聞きたかったのだけど、あまりにも無邪気に話すものだから
話の腰を折れなかったのだ。
まさか、こんなタイミングであの小さな謎が解決するとは…。
「………あれ?」
はて?と傾げた頭が意識せずとも結論へと回っていくようだ。
じゃぁ、この人が怒っていた理由ってのは…
「なるほど! 幼馴染の爆豪くんを差し置いて
私が緑谷くんを庇ったから、不愉快だったんだね!」
「っンなわけあるかっっ!
大概にしろっ! このクソアマがっっ!!」
パンと叩いた手から握られていた筈の物が転がり落ち
カランと音が鳴る。
ふと足元を見れば
それはつい今しがたこの身を護っていた金属棒だ。
そうだ、結論が出て忘れていたけれど
今は真剣試合の真っただ中
持ち掛けたのは私で、相手は爆豪くんだ。
なのにどうだ
何だかんだでかなり手加減してくれるし
今だって、隙だらけの私をねじ伏せる気配はない。
まるで構え直すのを待っているかのよう。
終いにはカラカラと音をたてるその棒を拾い上げ
仏頂面のまま私に握らせるではないか。
一見粗野に見えるけど
実は…面倒見のいい人だ。
つまりこの人は
「ツンデレと言うやつだね?」
導き出された結論を笑って口にすると
爆豪くんは顎が外れたかのように口を開け
固まってしまった。