第2章 【桜色】先天性世話焼き
~Sideハイリ~
………何故、こうなったのだろう?
ダンボールに囲まれた自分の部屋で
私は一人首を傾げていた。
保健室で受けた電話は父からのものだった。
引っ越し業者さんが私と連絡がつかなくて困っていたらしい。
そうだ、業者さんの手違いがあって引っ越しが今日になってしまったのだ。
今日は県外にある実家からの登校。
因みにこれが寝不足の原因だ。
そこまではいい。
あまり良くないけど、飲み込もう。
今の問題は彼だ。
「なぁ、これどこに置くんだ?」
「ええとね……。」
目の前にはダンボールを抱えて、当たり前の様に引っ越しを手伝ってくれる轟くん。
あれからメガネを忘れた私を追い掛けて来てくれて、お礼を言ったまでは良かったのだけど…
「今日は引っ越しがあるからお礼は今度!」と言ったら「じゃ、手伝う。」と返って来た。
もちろん丁重にお断りしたけれど、あれよあれよと言い包められて、業者さんが帰った今も手伝わせてしまっている。
逆ならともかく、手伝うのに私を言い包める必要はどこにあるのだろうか?
とは言え物凄く助かっているのも事実。
夕食くらいはご馳走すべきだろうと、本を仕舞っていた手を止め出前を頼むことにした。
「轟くん、出前頼もうと思うんだけど
一人前で足りる?」
スマホを見れば時刻はもう20時になろうとしている、流石に空腹だろうと思っての問いだったんだけど、返事はそっけないものだった。
「いや、気ぃ使わなくていい。」
いやいやいや
使うなと言っても無理な相談だ、
むしろこっちの台詞だ。
なんと温度の無い人なのだろうか。
見た目もクールだけど中身もクールだ。
そんな人が何故ここに居るのだろう?
疑問はさて置き今はご飯だ
正直空腹なのだ、私が…。
「いやいや、一人で引っ越し蕎麦ってのも味気ないし
付き合ってくれるとありがたいのだけど…。」
出前に興味なさそうに本をめくっていた轟くんは、何故かその二文字に反応して考える素振りを見せた。
数秒もたたぬうちに指を二本立てて
「二人前頼む。」
ぽそりとそう言った。
んんん?
お蕎麦、好きなのかな?
変わり身の早さに内心笑いながら
スマホを手に取った。