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【ヒロアカ】UAシンドローム【轟焦凍R18】

第2章 【桜色】先天性世話焼き


~Side轟~


「そんな希少な“個性”を一般企業に埋もれさせるのは勿体ないだろう?
それだけじゃない、
もしヴィランに目を付けられたらどうする? 
抹殺されたら?
それならまだいい、万が一取り込まれたら?」


社会の安定と身の安全。
二つの大義名分の元
少女は齢4歳にして将来ヒーロー界に入る事を課せられた。

だが大人の思い通りにならないのが子供と言うものだ。
成長するにつれ視野を広げていった少女は、少しずつそんな将来に疑問を持ち始めたという。


「結局、あの子はここのヒーロー科の推薦を蹴ってんのさ。
代わりに一般で受けて落ちた。わざわざ普通科を併願してね。
…………抗ってるんだろうねぇ。」


落ちた溜め息を沈黙が覆い、先程まで賑やかだった保健室は静音に包まれる。
下校時刻を過ぎて尚遠くに聞こえる生徒の声を耳にしながら、俺は普通科併願の意味を考えていた。


(つまり、わざと落ちたって事か…。)


敷かれたレールと表現されたアイツの決まった将来は
誰が見ても羨むものだと俺も思う。

ヒーローになることが確約されている様なもんだ。

それに抗うなんざ
聞く人間によっちゃ激怒モンだろう。

だか将来を大人に決められ強いられる
その一点が俺自身と重なって他人事とは思えない。
そもそも、それ程の“個性”とはどんなものなのか?

尋ねようと口を開きかけた時だった。


「ちよちゃん大変っ! 急用思い出したから帰らなきゃ!」


バカでかい声と音と共に、その難儀な少女が帰って来た。

余程慌てているのか、バタバタと入って来ては鞄をひっつかみまた扉へと手を掛ける。

黙って様子を見ていると扉を閉める前にひょこっと顔を出し、俺へと笑顔を向けた。


「えっと、君! 名前教えてください!」

「――……? ああ、轟…焦凍。」

「そっか! 轟くん、今日はありがとう!
今度ちゃんとお詫びします! ではっ!」


返事をする間もなく閉まった扉に苦笑が漏れる。
とてもさっき聞いた少女と同一人物とは思えねぇ。

先程まで鞄があった場所を見ればメガネがそのまま置いてあるし、何のために俺はここへ来たんだろうかと笑うしかなかった。




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