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【ヒロアカ】UAシンドローム【轟焦凍R18】

第10章 【桜色】二重カルテ


~Sideハイリ~


春の日差しは柔らかい
ましてやこんな大きな桜の木の下に座っていれば
その日は、桜の花と僅かに見え始めた葉に遮られ
殊更、柔らかいものになる。

口にした言葉に嘘はない
嘘じゃないからすぐに目を伏せた。
二人の時は出来るだけ素直でいたい。

そう…思ったのに


「…ハイリ。」


ふと落ちて来た声と
顔に射した影に落としたばかりの視線を上げる。
返事をしようとした口はそのまま塞がれた。


(え―……)


目を見開いている間に唇は僅かに離れ
間近で緩やかな弧を描く。
その弧が額に触れるまで私はずっと固まっていた。




キスに驚かなかったとは言わない。

だけどそれ以上の衝撃だ。

私の視線はピンで固定されたかのように
離れたばかりの顔へと定められていた。




こんな表情を見たのは初めてだったから…。


(……赤くなってる……。)


目元を赤く染めた焦凍の蕩けるような笑みは、とても甘くて
後ろに舞う桜と相まって

なんだか


「――キレイ…。」


目も心も時ごと奪われて
怒るのも忘れてしまう。


「………なにがだ?」


どうやら彼は笑顔一つで
私の時を奪ってしまったことに
気付いていないみたい。

更に瞳を和らげて私の髪へと手を伸ばす様は
一枚の絵画の様だというのに…。


(これは…無自覚なんだろうか…?)


でもお陰で
この上なく自覚してしまったんだ。


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