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【ヒロアカ】UAシンドローム【轟焦凍R18】

第10章 【桜色】二重カルテ


~Sideハイリ~


ぱくりと指先を食まれて
お皿の上でフォークが跳ねた。

怒る余裕なんてある訳ない
それくらい予想外の行動だった。


「なっ…っ、どうしたの…?」

「血…。」

「ち……?」


会話はちゃんとかみ合っていても
こちらの精神状態次第では理解できないと言う事は
ままあることだ。

ましてやそれが一文字ならば尚更だ。

私の指を口に含んだまま、「ち」の一文字を口にした焦凍は
説明は済んだと言わんばかりに指の背に舌を這わせていく。


(ち…って何……?)


仮にも治癒の“個性”持ちと称される私が
「ち」と聞いて血液を連想できないのは
きっと、この突飛な行動のせいだと思う。
その突飛な行動すら
ヒントだったというのに……。




混乱しているのだ、どうしようもなく。




僅かに手を引こうとしてみたけれど
思いの外しっかり握られていて出来そうにない。

チロと覗く赤い舌
窺うような上目づかい
男なのに
どうしてこの人はこんなに色っぽいのだろう…?

何より指先に触れる感触に
背が粟立って視界が滲んでいく。


(これ…くすぐったいって言うより…。)


頭の中で自動再生されたのは、昨夜の出来事だ

勝手に思い出して
熱が頭に上っていくのがわかる。


「……っ…。」


思わず漏れそうになる声を手で抑え込み
零れようとする涙は瞼で抑える。
震える肩に気付いたのか
掛けられた声は気遣うものだった。


「痛いか…?」


開いた視界に映ったのは案ずるような瞳だ。
対面する温度差に


(私は何を考えて……っ。)


羞恥が募る。

紅潮していく顔すら彼にとっては懸念材料だったようで
ヒタと額に触れた手に、初めて心配されている事に気づく。


「ぃゃ…痛くは…ないよ。」


返す言葉は、この春の穏やかな風にすら攫われてしまいそうな程小さなものだった。


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