第10章 【桜色】二重カルテ
~Side轟~
同じだ。
緑谷の時と。
あの時よりは
ハイリのことも把握してるつもりだ。
コイツは何かを抱えている奴を見つけると
ソイツの事しか考えられなくなる。
今は爆豪の事で頭が一杯なんだろう。
わからねぇとは言わねぇ。
それがお前の性分だ。
放っておけねぇんだろ?
だが
面白くねぇのは変わらねぇ…。
「ハイリ。」
名前を呼びながら隣に座るハイリの髪に触れる。
そのまま抱き寄せて頭を自分の肩に乗せる。
「な…っ……」
やっと意識をこっちに戻したハイリは
身を離しながら見る間に顔を赤くしていった。
「……何っ!?」
「飯、食い損ねるぞ…?」
昨夜の出来事を経ても
この反応は相変わらずなのか。
乱れてもいないのに髪を手櫛で直し
あたふたと手にしたフォークで、グラタンを勢いよく刺す。
口から出る説教も変わらずだ。
「ここっ…敷地内!」
「だな。」
「しかも外っ!」
「見りゃわかる。」
「~~~~~っっ!!!」
返す言葉を失って
赤面したまま口を引き結ぶハイリは
見ていて面白い。
朝から抱えていた不満が
ここへきてようやく満たされる
そんな気分だった。
同じクラスになったは良いものの
付き合う事を伏せたままのこの現状
俺としては喜びより、色んな意味で不満の方がデカい。
すぐそこに居るのに触れねぇってのは
この上なくストレスだ。
今後の為にもいい加減はっきりしてもらおうか
そう思って手を掴み引き寄せる。
「―――?」
口を開くよりも先に目に入ったのは
赤みを増した頬より赤い、小さな点だ。
ほっそりした指の白さを強調するかのようなその色に
視線を固めた俺は
ハイリの意向などお構いなしに、その指を口元へと引き寄せた。