第2章 【桜色】先天性世話焼き
~Side轟~
「ったく、人に世話ばかりかけて!
メガネはどうしたんだい!?」
「いや、それがぁ…無くしちゃって…。」
この二人の会話を聞いていると親子…
いや、祖母と孫の様だ。
家族の団欒を知らない俺が言っても現実味ないが
それこそ血の繋がりさえ感じた。
「ああ、それなら俺が持ってる。」
放課後にここへ寄った理由の一つをカバンから取り出すと、カサリと一緒に入っていたものも落ちる。
朝貰った飴が入っていた包み紙。
「おや、ハイリ? さっそく飴をあげたのかい?」
「うん、朝食取ってないみたいだったから。
でもよく食べる気になったね?」
「フム」と考え込む素振りを見せたリカバリーガールに対し、渡した本人は心底不思議そうな目を俺へと向ける。
自分で渡しておいて何を言ってんだ…
なんか変なモンでも入ってたのか?
それでも普通言わねぇだろ…
もちろん疑問に思ったが、今はそこじゃねぇ
「俺、朝飯抜いた事お前に言ったか?」
そんな悠長な会話する程、朝の俺らに余裕はなかった。
言ってるはずがない。
俺の問いに事も無げに「あぁ、」と振り返ったソイツは
「それはね、私の“個性”で――…あ、電話だ
ちょっと席外します!」
説明する気はあるのだろうが、気になる言葉だけを残し保健室から出て行った。
「…………………マイペースだな。」
静けさに俺の独り言がおちる。
閉じた扉を見たままのリカバリーガールは、
カラと回された椅子に飛び乗り息を深くついた。
「随分甘やかしたからねぇ…。
あれでも難儀な子なんだよ。希少な“個性”を持って産まれてしまった為に将来を迷う間もなくレールを敷かれてしまった。」
「将来…?」
だから許してやってくれ。
そう言いたげに溜め息をつく老婆は
その内ヒーロー科には知れ渡る事だからと前置きをし、静かに語り始めた。
「あの子の“個性”メディケーションはね、私と同じ治癒の“個性”なんだよ。
故に個性届が出された途端、大騒ぎさね。
どの機関があの子を確保するか、どこもかしこも水面下で動く、雄英もその一つさ。」
とても雄英の教諭とは思えないほどの嘲笑。
嘲笑われた雄英は、まるで子供を未来を潰しているかのように表現されていた。