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【ヒロアカ】UAシンドローム【轟焦凍R18】

第10章 【桜色】二重カルテ


~Sideハイリ~


この人にとっては私の反抗なんて
「今に始まったことじゃない。」
その程度だろう。

半開きの目をチラリと私へ向けて
片端だけ上げた口がお前に逃げ場はないと笑っていた。


「編入じゃないさ、ちょっとC組から借りるだけだ。
電話したのにお前が出なかったんだろう?」


昨日も思ったけれど、
その様はもうヒーローと呼べるものではない。
ただでさえアングラ系ヒーローなのにこんな笑い方をしては
間違えて逮捕されてしまうのではないだろうか…?


(なんと言うか、悪役が身に付いてない…!?)


だがしかしだ
ヒールになりきっている様な消太くんの言い分は
悔しいが尤もだ。
電話に出なかったのは私の落ち度、そこは認めよう。
でもだからって


(強引すぎるっ。)


そう、強引すぎるんだ…。
僅かな引っ掛かりに手がピタリと止まった。

意味無くこんな事をする人じゃない。
昨日のあれは、私自らこのクラスへと足を踏み入れる様にする為の誘導だった。
こんな事をするのなら
昨日の時点で同じことをすれば良かったはずだ。


(いや、昨日どころか入学初日の時点の方が…)


他の生徒も混乱せずに済む。
合理性をこの上なく重んじる、消太くんらしからぬ措置。

昨夜の言葉を受けて、吹っ切れていたためか
冷静さを取り戻すまで時間はかからなかった。

だけどそれ以上はわからない。
服を掴んでいた手は自然と離れていった。

私が引いたのを満足気に笑う消太くんは
何事も無かったかのように取り付けたような説明を始める。


「このクラスの保健室利用率は入学間もないこの時点で、
既に学年どころか校内トップだ。
リカバリーガールをうちのクラスの、主に1人が独占する訳にもいかないだろう?」


わからない。
同意すべきなのか、拒否すべきなのか。

ただ分かったのは一人俯いた男子生徒のこと。


(主に1人って…緑谷くんの事ね。)


これ以上食い下がると
彼を追いつめてしまうことになる。

消太くんの思惑通りに事が運ぶのはちょっと癪だけど
結論を出すには十分な理由だ。


「わかりました…。」


時間は一瞬
でも充分悩んだ末の「私の」結論だった。


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