第9章 【桜色】カレカノ依存症
~Sideハイリ~
本当に嬉しかったんだ。
だから…ずっと言いたかった。
「ありがとう…。」
だから好きになった訳じゃない。
見た目には些細だけど
私にとってはとても大きなものだった。
ただそれが、きっかけとなっただけ。
好きだと気付いた瞬間は覚えているけど
好きになった瞬間なんて覚えてない
気付いたら始まってたんだ。
まさかこの3日で、ここまでの急展開を迎えるとは
思ってもみなかったけど…。
小さく噴き出して見上げた焦凍は
さも理解できないとばかりに首を傾げていた。
「食うだろ普通。」
「言うと思った。焦凍って面白いよね。」
「そうか? 初めて言われる形容詞だぞ?」
この人のこういう所が好きだ。
特別を、普通にしてくれる。
ちょっと言葉はおかしいけれど
それこそが私の特別なんだと思う。
運命とかあまり信じる方ではない。
相性占いだって気に留めたりなんかしない。
でも
もしかしたらこの人が…なんて思ってしまう辺り
私の病はかなりの重症みたいだ。
「大好き…っ!」
少し体を起こして頬にキスをすると
一瞬固まった彼の頬が僅かに緩む。
体重を掛けながら跨ってきて
見下ろされれば、張り裂けそうなくらい鼓動は跳ねるけど
同じくらい愛おしいと思う。
「どうせなら口が良い。」
そう言って揺らめいた瞳には先程と同じ熱が灯っていて
微笑みながら頷く。
今夜はまだまだ翻弄されるんだろうなって
焦凍に悟られないように笑った。