第9章 【桜色】カレカノ依存症
~Sideハイリ~
キツイならって言われて
実は結構…焦ったんだ。
ホントは緊張で心臓張り裂けそうだったから。
「えーっと、危険だって事は話したんだよね?」
「ああ。つか、俺が言うのもなんだが
話…全然進んでねぇ。」
ホントは私が悪いのに
焦凍は自分が悪いって事にしてくれてる。
背に回された手は今までとは違う撫で方だ。
泣く子をあやす様な、ゆったりとしたリズム。
お陰でかなり肩の力も抜けて楽になった。
自分はここまで甘えっ子だったのか、って
呆れてしまう程に。
初めての説明をちゃんと言葉に出来たのは
間違いなく彼のお陰だと思う。
「一昨日サラッと話したけど
私の作れる薬の中には劇薬なんかも含まれるんだ。
これが面倒な事に、診断する度に投薬リストにアップされちゃうの…。」
私の“個性”の説明はちょっと厄介だ。
診断後は特に。
例えるならPCのモニター…だろうか。
病名を入力してズラリと投薬リストが出てくる。
そのリストから作りたい薬をクリックする。
そして先ほども言ったとおり
そのリストには治療薬とは到底言えないようなものまで並ぶ。
しかも先頭に。
「……………は?」
予想どうりというべきか
焦凍の第一声は間の抜けたものだった。
珍しい、この人の呆けた顔なんて
そうそう見られるものじゃない。
いつも飄々とした焦凍も
こればかりは流石に驚いたと見える。
理解したからこその反応だ。
握りしめた手は僅かに汗ばんでいた。
「つまり、あれだよな。
次の選択肢から正解を選べ…と?」
「ま、そんなとこ…。」
一瞬、私を気遣って冗談を言ってるのかと思ったけど
ものすごく真剣な顔してる。
これ真面目に言ってるんだよね?
(なんで…設問風?)
笑っちゃいけないやつだよね?
わかってるんだけど、間違いなく伝わってるんだけど
堪えきれず吹き出してしまった。