第9章 【桜色】カレカノ依存症
~Side轟~
もしかしたら泣いちまうかもしれねぇ。
そんなことを考えながら最初の相槌を打つ。
だけど、泣く気なんざ更々無い
そうアピールするかのようにハイリはお道化て笑う。
「なんでかって言うとね、偏に…危険だから!
なんだよねぇ。」
そう言ったかと思うと枕を抱いたままころりと転がり
今度は仰向けに。
肩をすくめて向けられたのは子供の様な笑み。
目に見えて落ち着きが無ぇ。
下手な演技を見てられず無理やり枕を奪い取る。
「あっ!」
「あ、じゃねぇ。
キツイなら話さなくていい。
話せる時でいい。」
そんなに強い口調じゃなかったはずなのに
ハイリはしゅんと肩を落として布団の中に頭まで潜り込んだ。
さっきから、らしくない行動ばかりでこっちの調子も狂うってモンだ。
それに…
「………ない。」
そんな状態で話されても聞こえる訳がねぇ…
「……ワリ、なんて言っ――…」
案の定、次の言葉は聞こえず聞き返そうとする。
しかし、言い終わるよりも先に
布団の中からズボッと頭だけ出して噛みついてきた。
「キツくないもんっ!!」
「…………………。」
今
初めてコイツの素を見た…
そう思った。
確かにフワフワして放っとけない奴だ
無自覚で無防備で危なっかしい
だけどどこか達観しているところがある。
そう思っていたが…。
目の前のハイリはそのどれにも当てはまらねぇ。
頬をぷぅっと膨らませ、まぁるい目で睨みつけ
心なしか涙ぐんでいる。
年相応どころじゃねぇ
ただのガキだ…。
だけどそんな姿に
俺は間違いなく、安心できたんだ。
「悪い、話の腰折ったな。
ちゃんと聞くから機嫌直してくれ。」
「ん、ちゃんと聞いてね。」
抱き寄せて頭を撫でると途端に甘えてくる。
頭を摺り寄せるのは癖だろうか…?
素に戻っても仔犬みてぇだ。
「とは言っても、こんな話するの初めてだから
要領得ないけどね…?」
「わかったわかった。
黙って聞く。」
「よろしいっ!」
あっさりと機嫌を戻したハイリは
眉を下げて笑った後、俺の肩に頭を置いて再び口を開いた。