第9章 【桜色】カレカノ依存症
~Side轟~
重ねた唇はすぐに離した。
何も初めてのキスじゃねぇ
だがどれ一つ了承なんか取らなかった
気持ちすら確認せず
思うままに行動した。
少なくともこれは、それらとは違う
俺がそう思いたかった。
短いキスに物憂げに眉を下げたハイリは
俺の首をへと腕をまわし
僅かに頭を浮かして、離れたばかりの距離を0にする。
「…………っ。」
コイツからってのはこれが初めてだ。
目を見開いたまま固まった俺を見て
ハイリは少し得意気にはにかんだ。
(これは反則だろ……っ)
ハイリは俺に翻弄されてばかりだと言うが
それは違う。
本当は逆だ
「煽んな。
後悔すんのはお前だぞ?」
「しないもん…。」
この目に囚われてんのは俺の方だ。
俺が翻弄されてんだ
どうしようもなく好きで
触りたくてしょうがねぇ。
僅かに外れた箍が、脈も呼吸も加速させ
次はたっぷりと時間をかけて
柔らかいハイリの唇を味わう。
(甘い…。)
頬、耳、首、鎖骨
食む度に頬が上がるのがわかる
(コイツはどこもかしこも甘いのか。)
耳をかすめる吐息が切なげに震え
それが自身を熱くする。
ハイリの肌を包むパーカーのファスナーをゆるゆると下ろすと
その間から薄い布を纏う白い肌が覗いた。
露わになった首筋には
昨日付けたばかりの赤い痕
俺のモノだって印
『見えねぇところに付けるには
脱がさねぇと無理だ。』
肩紐を口で外しながら
昨日吐いたばかりの自分の言葉に
フと笑う。
よくあんなに軽く言えたモンだ。
この白い肌に痕を残す
まだ足跡の無い純白の雪を
踏み荒らす様な優越感。
高揚に身を任せ
その肌に自分の印を刻んでいく。
服を乱され僅かな布しか纏ってないハイリは
昨日以上に扇情的で艶めいて見えた。