第2章 【桜色】先天性世話焼き
~Sideハイリ~
桜の木の下で寝ていた筈の私が
何故ここに居るのだろう?
こちらが改めなければ説明も聞けそうにないと判断し
起き上がるよりも先に口を開いた。
「遅くなったけど誕生日おめでとぉリカバリーガール!
んで、私はなんでここに?」
大体、初対面で「ちよおばーちゃん」と呼んだ幼子に「ちよちゃん」と呼ぶよう義務付けたのは彼女本人だというのに、怒られる道理がどこにあるのだろう?
全くもって大人って身勝手だ。
(一体いくつになったんだろう……?)
とは言えベッドを貸してくれたのも彼女なわけだし、
挨拶もするつもりだったし
頭はかなりスッキリしてるし
うーんと背伸びしてベッドから足を降ろし
寝ている間に外されたのであろうネクタイを首に巻きながら、仕切りのカーテンを開ける。
「ちよちゃん、今何時ー?」
未だ慣れないネクタイと必死に戦いながらの問いに返ってきたのは、ちよちゃんとは違う声だった。
「そろそろ18時だ。」
「わーお、良く寝たな…………ぁ?」
上手く結べないタイから目を上げて
そう言えばもう一つ声があった様な…なんて薄い記憶を引っ張り出す。
だけどそんな思考も目の前の人にぷつりと切れてしまった。
「えっと、君…朝の……?」
「ああ、また会ったな…と言うべきか?」
相変わらず綺麗な顔。
朝の無表情とは違って淡く笑みを浮かべたまま、彼の両手が首元へと伸びて来た。
「下手だな。」
「スミマセン…。」
どうやら見兼ねてネクタイを結んでくれるらしい。
なんだか朝から世話を焼かれてばっかりだ。