第2章 【桜色】先天性世話焼き
~Sideハイリ~
「なんだ、来たのかい?」
「なんか気になったんで。」
浅い眠りの向こうで聞き覚えのある声が
聞こえたような気がした―――…。
と思ってたけど、気のせいじゃなかった。
「ほれ起きるんだよ! いつまで寝る気だい?」
「や……もうちょっと…。」
「幼子みたいなこと言ってんじゃないよ!
見舞いが来てんだよ! こらハイリ!!」
会話が成り立って気付いた現状。
ここが何処かはこの声の主が著明に表している。
手触りなんてとてもいいとは言えないシーツから顔を出し
カーテンに遮られた薄明りの中で目を開ける。
病院とはまた違う、頭が冴えるような馴染み深い薬品の匂い。
ここは―――……
「ちよちゃん……?
ってことはここ、保健室?」
「リカバリーガールとお呼び!
あたしゃ教諭であんたは生徒だ、ったく…。」
ぷりぷりと怒りながらカーテンの向こう側へと消えていった小柄な老婆はこの学校の看護教諭だ。
本名は修善寺治与
“個性”は癒し
私の“個性”との兼ね合いもあって小さな頃からの顔見知り。
それにしたって「全く」はこちらの台詞だ。
せめてのこの状況を説明して欲しい。