第8章 【桜色】パニック &ぱにっくシンドローム
~Sideハイリ~
間近に迫った色違いの両眼は
その色とは違ってとても温かい色をしていた。
「キレてねぇ、だからそんな顔しないでくれ。」
全く、本当に狡い人だ
怒ってると思ったら、急にこんな優しい目をするなんて。
そしてこういう時ばっかり
ちゃんと感情が伝わってくるんだ。
何度言っても言い足りない。
……狡い人だ。
お陰で凹んで居られなくなってしまった。
「うん、ありがと。
ちゃんと誤解を解いてもらうよう、連絡しておくね。」
「ああ、頼む。」
ぽんぽんと頭を撫でられた回数は2回。
その温もりを逃がさないように、自分の頭に手を添えて小さく笑う。
こんな所作一つで
安心してしまう自分があまりに面白くて。
「了解!」
そもそも、
消太くんが意味有り気な事ばかり言うのも悪いんだ。
これは二言三言、言ってやらねばと
取りだしたスマホに表示された番号は
もちろん消太くんのもの
だけど耳に届くのは単一なコール音ばかりで
一向に出る気配がない。
「出ない…。」
確かに携帯を常備してるってタイプではない。
それでも一応プロヒーローだ、そう遠くない時間に見るだろうとLINEだけ送って画面を閉じる。
「相澤先生、出ないのか?」
「うん、忙しいのかな……?」
叩いてやろうと頭に並べていた憎まれ口も
繋がらないのでは形を失っていく。
どこかスッキリしない気持ちは残っているものの
「気にしてねぇ。」そう言って手を引いてくれる彼に
逆上せてしまって、ゆるゆるとその不快感も薄れていく。
(夜にもう一度連絡してみればいっか。)
ただ轟くんの隣が居心地よくて
頬を緩ませながら家への道をのんびり歩く。
その頃
学校で何が起きているのかなんて
今の私には知る由もなかった。