第2章 東京は暖かい
翌日の朝。カーテンを開けると見事な青空に太陽が照っていた。
道路を見やると、昨日の大雪はどこへやら。
車に何度も踏みつけられたのだろう雪は、たくさんの水へと変化して道を沈めていた。
家屋の屋根や日陰にはまだひっそりと白雪が残っているが、日が高くなれば消えてしまうだろう。東京は今日も暖かい。
—あたたかいことがこんなに気持ちいいなんて。知らなかった
ふと、いつだか聞いた彼女の言葉を思い出す。
オレだって、身を切るような冷たさが心地よいものだなんて、彼女が教えてくれるまでは知らなかった。
東京は今日も暖かい。芯から凍えるようなあの寒さを、この土地で暮らすかぎり、一生味わうことはないだろう。
オレは布団をベランダに干すと、今も真白く染まっているだろう北国の方へ、ボンヤリ目を向けた。
東京は今日も暖かい。明日もきっと暖かいだろう。
おわり