第5章 "ほ…惚れたのだよ…!"
亜美「え!?な、なに?」
私が目を丸くして椅子を引くと、緑間くんは自分の背中からめちゃめちゃ大きい何かを取り出した。
緑間「お前の今日のラッキーアイテム、巨大なカメのぬいぐるみだ。受け取れ。」
か、カメ!??
見ると確かに可愛らしいクリクリな目をしたカメのぬいぐるみだ。
亜美「これを…私に?」
緑間「当たり前だ。俺が開店と同時に買ってきたのだからな。」
聞くと開店1時間前にオモチャ屋さんに行って買ってきてくれたみたい…。
だから今日遅刻したんだ…。
私の為に…。
いや、それは本当に嬉しいんだけど…。
亜美「いやいや!気持ちはすっごーく!嬉しいんだけどね!…でも、こんな高そうなぬいぐるみ受け取れないよ…」
私は両手を前に出し、そのぬいぐるみを緑間くんに押し返す。
緑間「…そうか。では…」
そう言うとその場にしゃがみ、カメを私の机に立て掛けた。
亜美「…って!ちょ、おーい!!」
緑間「ラッキーアイテムというのはその場にあるだけでも効果があるものなのだよ。」
亜美「だからって…これじゃ皆の邪魔にっ…」
緑間「人事は尽くした。これで安心なのだよ。」
私の話を聞かず、スタスタと廊下に向かって歩き出す緑間くん。
そのまま教室を出てしまった…。
…もしかして、緑間くん、昨日の私の事を心配してくれたのかな…。
緑間くんから頂いたカメを抱きしめる。
ふと見るとクラスの皆の視線を感じた。
亜美「あの…えっと、これは…」
「ねぇねぇ!亜美と緑間くんって付き合ってるの!?」
「えー。私緑間くんの事好きだったのになぁ!」
案の定、女子からの大量質問攻め。
亜美「ちょ!あの!ご、ごめんなさい!」
耐えきれなくなった私は大急ぎで教室を出てしまった。
亜美「はぁ、はぁ…カメ持ってきちゃった…」
今戻ってもまた質問攻めにあう。
仕方なくトボトボと廊下を歩く事にした。