第17章 しんろそうだん2
いつも一人でいるか、雑用を押し付けられてやらされているか、そのどちらか。
あとは一回だけ、公園で知らないヤツに口でシているのを見たことがあった。
去年の今頃だったかもしれない。
夕焼けに染まる遊具、部活の終わりの帰宅中。
ふと人の気配を感じて横を見ると、膝をついているるるさん。
綺麗な横顔で、グロテスクな他人のソレを咥えている。
「…っ!!」
声を出さないように、すぐに塀に隠れた。
見てはいけないとわかってても、好奇心には勝てなかった。
「あぁ…るるちゃん、いいよ…」
「飲んでいいですか?」
「飲んで…飲んでっ!」
「んっ」
妖艶にしごくと、口に咥えてコクコクと出したモノを体内に入れていく。
少し甘ったるい声は、普段しない。
年が凄く離れたように感じた。
髪を耳にかけると、あまり知識のない俺でも、血液が集まってくる感覚がした。
正直、好きな子のそんな姿を最後まで見ていられるほど大人じゃない。
慌てて家に帰ると、思い出しながらこっそり抜いた。
そんなことをしたことがある罪悪感で、上手く目を合わせられなかった。
「るるさんは、将来の夢とか決まってる?」
なんとか頭からかき消そうと話しかける。
「繋心さんの、お嫁さん」
珍しく無邪気に笑った顔と、そのあまりにも妖艶な姿が脳内に2つ並ぶ。
あの無骨で無愛想なコーチが、華奢な彼女を抱いているところがイヤでも脳内を過る。
あのゴツい大きな手が、薄くて透明なこの肌に触れるんだろうか。
「っ!」
(あー!!なに考えてんだっつーの!!)
彼女は部活してるところが好きだと言った。
頬を赤らめて潤んだ瞳でそんなことを言うのだ。
本人からしたら一たまりもないだろう。
(なんで俺がドキドキしてんだろ…っ)
彼女はとても丁寧にお辞儀をして別れようとした。
少し気になって前みたいなことまだしてるのか、野暮なことを聞こうとした。
ふんわり残る花の香りと煙草のにおいがする。
(ほんと、野暮だった…)
安心したように彼女を見送ると、ちょっとだけ、切なくなった。