第16章 しんろそうだん
「ま、お前ほどいろんなモン背負ってるわけじゃねーし、気軽なもんだわ」
軽く笑うとまた手を重ねてくれる。
「いろいろあったんだろ?
それは、凡人の俺には想像するよりもキツいことばっかだったと思う。」
「…うん」
「もう頑張るなよ。
そんで、なんかあったら、泣け」
「……う、うん」
今まで欲しかったのに、誰にも言われなかったこと。
ずっと我慢してた沢山の出来事。
いつからか、感情を我慢してた。
堂々と余裕そうにしてれば、怒られないし、怖い目に合わないし、嫌なことは回避できた。
代わりにたくさんの私らしさを捨ててきた。
何かが溢れて込み上げてきて、人生で初めて嬉しさで泣いた。
「うっ……ううっ…」
ちょっとだけ緊張してる繋心さんの腕がおどおどしながら背中に回る。
暖かくて。きもちいい。
「繋心さん、えっち…」
「しー。夜にな?」
「ぶー…」
頬についた涙の痕をそっと袖で拭いてくれて、繋心さんはやれやれと笑った。
少しだけど、少しずつ、繋心さんは私の道を探してくれている。
もう迷子にならないように、丁寧に。
私にはなにも出来ないけど、それについていこうと決めた。