第16章 しんろそうだん
空いた時間は鞄から通帳を取り出して見ていた。
「進学かー……」
私はずっと何年も、消えようと思っていた。
徹さんの厳しい監視下ではそれは難しく、家出の決心もほとんどそのつもりで動いていた。
残念ながら空腹というものは抗えない。
どんなに死にたくても消えたくても、本能は勝手にくたばらないようにされている。
意識朦朧としながら小銭を探して肉まんを買ったのは、自分でも驚いた。
そういえば、私はお金を稼ぐということをほとんどしたことがない。
唯一してたのは、昔の家で……。
そこまで思い出そうとして、慌てて止める。
「いやなこと、思い出したなー」
消えることのない罪と罰は付きまとう。