第14章 あこがれ
配達ついでの帰路、
「顔のしまりがなってねえ」
と言われた。
「だって、かっこいい…」
「ドエムじゃねえか。
怒られたい、とか、追いかけられたい、とか、ボールぶつけられたい、とか……」
「独り言つつぬけでした!?」
「顔に書いてあるっつーの」
繋心さんはむすっと言うと、煙草を吸い始めた。
照れ隠しのクセで、吸っているのを知っている。
「あんな顔すんならもう部活来んな」
「なんでですか……?」
なんとなくショックだった。
でも確かに試合前に私がにまにましていたら、部活は締まらないだろう…。
理由によっては私が控えざるおえない。
覚悟しながら真剣に繋心さんの目を見た。
もうすぐ家に着くのに、繋心さんは急に車を止めて私を引き寄せる。
たくましい胸板におさまると、ドキドキと私と同じくらい激しい心音と、少しだけ塩っぽい汗のにおいがする。
「…ヤってる時と同じ顔してんだよ…。
他のヤツに見せたくねえだろ?」
「………そ、そんなに?」
「…そんなに」
恥ずかしさと嬉しさで、胸に居心地良く寄せられたまま。
胸の奥がむずむずして、行き場のなかった手をゆっくり背中に回す。
「繋心さん……キス、して…?」
「ダメだ」
「…お願い…」
きゅっと力を込めると、お互い息が詰まる。
「抑えらんなくなる……」
「抑えなくてイイです…っ」
ちゅっと軽く唇に触れられると、おでこをピンと指ではじかれた。
「いっ!!」
「帰るぞ」
冷静に返されて凄く寂しかった。
けれど、握ってくれた大きな手は、いつもより熱くて、それがなんとなく嬉しかった。