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迷い道クレシェンド【HQ】【裏】

第13章 迷い道


「ごめん、ごめんね」
「……」
「盗られてやっとわかった。
愛してる」
「……」
「もっと笑ってもらいたかったのに、俺の自己満足で甘えてた。
許して欲しいとは思ってない。
けど、あの家は、るるの家でもあるから」
ずっと言えなかった、モヤモヤとしたものを一つずつ吐き出した。
逃げられないと思ってたから、甘えてた。
歪んだ愛情を唯一受け取った女は、不安そうに俺を見上げると、手を回してくれた。
少し震えてた。

「ありがとう…助けてくれて…」

その一言にとても救われた気がした。
助けなきゃよかった、とまで考えてた俺を優しく受け止めてくれてるようだったから。
「そうだ、1回家に帰った努力が無駄になるとこだった」
俺は鞄から、1冊の通帳と印鑑を渡した。
「父さんから。進学諦めんなってさ」
「う、受け取れない…」
「ダメ。持って帰ったら俺が殺されちゃうから」
「……っ」
「俺のせいで、余計に傷付けた、ごめんね?」
「ううん、ありがとう…っ」
るるは声を押し殺してずっと泣いてた。
月に照らされた涙はすごく綺麗で、初めてちゃんと、出会ってよかったと心から思った。
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