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迷い道クレシェンド【HQ】【裏】

第13章 迷い道


「るる、会いたかったよ」
「!」
優しく抱き寄せると、俺の意外な態度に驚いていた。
「けーしんさんと、上手くやってんの?」
「……うん、いま、ちょっと喧嘩しちゃったけど…」
俺を見る怯えた目は変わらない。
綺麗で真っ黒で、まるで助けられないどん底にいるようだ。
「はい、これ。
俺の番号も入れといたから。
帰りたくなったら、連絡して?」
「…あり、がと……」
俺が追い出したのに、なんでこんなことするんだろうとるるは戸惑いながら携帯を受け取った。
さっきまで恋愛映画のヒロインみたいに笑っていたんだろうか。
美味しいものを嬉しそうに頬張っていたんだろうか。
見たこともない顔をたくさんしたんだろうか。
「あと、おじさま…元気?」
涙ぐみながら必死に話題を探するるは、ふと思い出した数年間の親の顔を浮かべた。
進学を遠慮したるるに怒って追い出していたのは、昨日のことのように覚えている。
「ああ」
「…うん、なら、いいんだ…」
「心配してた」
「元気、って、伝えておいて」
まだ警戒心がとけないるるは一歩近付くと一歩下がる。
「俺のこと、怖い?」
「……こ、怖くない」
「ウソ」
目をそらすクセは相変わらず。
口を開けると音もだせず閉じた。
逃げ出そうとする細い手首を掴み、引き寄せ、そのまま胸にも満たない小さな身体を抱き締める。
「と、とおるさ、…っ」
そっと背中に手を回し、今まで付けた傷を一つ一つ確かめた。
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