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迷い道クレシェンド【HQ】【裏】

第109章 【番外編】写真とリアル








じじいの卓に何が置いてあると思えば例の雑誌。
何故言わなかったのか一言大声で言われ、眉間にシワが寄る。
多忙だったのもあり、照れもあり、熱い一夜のせいで頭から抜けていたのもあり。
そういう細かいところから孝行しやがれと追加で嫌味を言われ、更に顔を顰める。

帰宅するとるるが楽しそうに何か作っている。
「じゃーん!この前の雑誌をコピーして作りましたぁ」
写真を封入したプラスチックの何かにビーズやら何やらが揺れてて、あまりにもそれに不釣り合いな写真の人物にそれはどうなんだ?と思いつつも口にしないようにした。
「おじいさま、元気でした?」
「なんの問題もなさそうだった」
隣に座りながら答え、尚もにこにこしながら新しく生成されていく自身のグッズを見る。
「雑誌ちゃんと買ってて笑っちまったよ」
「当然ですよ〜せっかくの記念ですもん」
歌でも歌うかのように明るく答えられる。
「…………」
ふと考えたことをつい言ってしまう。
「それ、じじい用にも1個作れるか?」
と聞いたら見たことない笑顔で頷く。
「ぜひ!!
今度おじいさまにお会いしたら、繋心さんの好きなところのお話、たくさんしようと思ってたから…嬉しいです…」
「……本人には言わねえのかよ」
予想外の返答にムッとする。
「うーん、共感してくれます?」
「しねぇ」
「じゃあだめです〜」
悪戯好きのガキがからかうときの口調でぶっぶーと手でバツされて言われる。
祖父と嫁が仲良くしてくれるのは、まあいいことか、と安堵のような嬉しいような気持ちになる。
「るるが撮ったやつじゃ作らないのか?」
「……?」
「俺は、るるが撮った自分の写真、嫌いじゃねえ…なんなら、こっちより良いと、思う…」
「っ!!!」
るるは顔を真っ赤にすると、固まってじっとこちらを見る。
言いながら照れてしまってどもったが、彼女は更に照れているようだ。
実際、最初から思ってた疑問だった。
自然体の、そのままの写真が良いと。
頬を搔いて宙を見て恥を誤魔化そうとしたが、急に柔らかい身体がのしかかり、そのまま抱き締められた。
「……好きです…」

何時間そうしていただろうか、背中が痛くなるまで床で抱き合った。
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