第99章 【番外編】ふたりさんにん
家に着くなり晩御飯のいい香りがした。
炊きたてのご飯と煮物と、お魚の匂い。
「ただいまです!お腹すきました!」
にこにこしながら荷物を置いて、コートをハンガーに掛ける。
「出来てるぞー」
抑揚のない声がキッチンから聞こえる。
予定のない日は、こうしてご飯を作ってくれるのがなんだか嬉しい。
座って両手を合わせていただきます、と笑顔で言った。
食べながらふと横を見ると、母校のユニフォームが下げられている。
「どうしたんですか?あれ」
やや語尾を伸ばしながら尋ねると気恥ずかしそうに、
「実家帰ったらあったから…なんとなく」
クリーニングに出された後なのか、薄いビニールがかかっている。
「触ってもいいですか?」
と聞くと声もなく頷かれた。
ドライな糊の匂いと、クリーニング屋さん独特の仕上がった触り心地。
なんとなくだけど、十数年前の当時の熱気も少し感じてちょっとドキドキする。
きっと今より幼い彼が着てたはずなのに、大きさは私の身長より全然大きくて、やっぱり異性なんだなーとぼんやり思った。
「もういらねえもんだ、好きに使っていいぞ」
「え!なんか勿体ないですよ…!」
なにがだ、なんて笑われて、そんな話をしてたのがもう数日前、だった気がする…。